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マンモグラフィ検診についての分かりやすい(?)お話し

以前の投稿で、リビング福島さんに載せた記事をもとに、乳がん検診の説明記事を書きました。

この度、ハシドラッグさんの新聞に説明記事を載せましたが、文章での説明内容はかなりの部分は以前の説明とダブっています。
文字だけで説明するのは、読まれる方々も理解するのが難しいので、百聞(読)は一見に如かず。
少し写真などを交えながら、なるべく詳しく説明をしていきます。

まず、マンモグラフィですが、これは乳房のX線撮影で、胸部X線検査などと同じく、一枚の撮影で、乳房全体を写すことが出来るのですが、乳房を横から撮影するので、そのままであれば乳房の根元が厚く、乳頭の部分が薄くなりますので、全体を同じ条件で撮ることは出来ません。このため乳房を二枚の圧迫板で挟み乳房を同じ厚さに広げた状態で撮影するのです。重なりの少ない写真が撮れれば「要精密検査」が出る率を下げることが出来、このあたりは技師さんの腕の見せ所です。乳房を薄くすることで、被ばく量が減り、X線の散乱も減るので、コントラストの高い、シャープな写真が撮れます。

乳腺内には主に二つの組織が存在します。一つはコラーゲン蛋白が主体の線維性結合組織(以下、線維性基質)であり、その中にミルクを作る線組織や、出来たミルクを運ぶ乳管組織などが存在します。もう一つは脂肪組織です。その比率は年齢とともに大きく変化し、特に閉経年齢前後で、脂肪組織の割合が増加してきます。
線維性基質はX線を通しにくいので、マンモグラフィの写真では白く映ります。腫瘍組織も線維が多く、ほとんど脂肪を含まないので白く映るため、本来の線維性基質が豊富な若い女性の乳房(デンスブレスト)に腫瘍が出来ても分かりにくいのです。逆に、乳腺内の脂肪の割合が大きくなってくると、背景に黒い部分が多くなり、白く写る腫瘍は分かりますくなります。(下図をご参照下さい)。

閉経後女性の乳房内に見つかった小さな乳癌
閉経後女性のマンモグラフィで発見された小さな乳癌

もう一つマンモグラフィ検診での最大のメリットは、乳癌組織にしばしば伴われる石灰化という所見で、シコリになる前の極めて早期の乳がんが見つかる可能性があるため重要な所見です。
石灰化は非常にコントラストが高い、白い微細な点状の影として写るため、多少の高濃度乳房であっても確認できることが多いですが、淡く非常に小さな石灰化もあり、やはり脂肪性乳房の方が発見しやすいのです。以下のマンモグラフィでの石灰化例は、いずれもシコリを形成する前に癌の発生初期に石灰化だけで見つかった乳癌の例です。
石灰化を伴う乳がんは、乳がん全体の半分にも満たないため、残りはこの時期に発見されることなく増殖を続けます。そこをすり抜けた乳がんが次に見つかるのは、シコリを形成してからです。
尚、乳房に出来る石灰化の多くは、良性(がん以外の原因によるもの)です。

マンモグラフィの石灰化像で発見された非浸潤癌 1
マンモグラフィ検診で微細石灰化で発見された非浸潤癌


 マンモグラフィ検診で微細石灰化で発見された非浸潤癌

マンモグラフィ検診の開始年齢を閉経近くまで遅くする理由として、上述の理由があります。もう一つの理由は、若い女性の乳房は放射線感受性が高いため、若いうちから毎年マンモグラフィ検診を行うと、発がんリスクが上がる心配があることです。
もちろん、乳癌死亡率を下げる、という検診の目的を効果的に達成することを考えれば、乳癌好発年齢に行う必要があります。乳癌は、30台後半くらいから増えてきて、50歳くらいまで増え続けます。閉経年齢である50過ぎから行う国もありますが、わが国は乳癌がかなり多くなる40台を含める設定になっています。

以下、これらの事実を踏まえ、マンモグラフィ検診の効果(乳癌の死亡率低下)が50以上の年齢で有意に現れる、という臨床試験の結果を示します。
下のグラフは10年ごとの年齢層別にみたマンモグラフィ検診施行群と非施行群の乳癌死亡率を示したものです。50台と60台で特に検診開始後に年を追うごとにマンモグラフィ検診群の死亡率のグラフが非施行群(コントロール群)と比較して低くなっていくことが分かります。乳がん検診の方法として、このような臨床試験で有効性(乳癌死亡率の低下)を証明できているのはマンモグラフィだけなので、自治体検診ではマンモグラフィが使われるのです。


乳がん検診の年齢別効果

マンモグラフィ乳がん検診の効果に関しては、国立がん研究センターが運営する公式サイト、がん情報サービスの中に、乳がん検診に関する以下のサイトがあります。
https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/screening/screening_breast.html
その「乳がん検診検査法の有効性評価について」の記述の中に、マンモグラフィ単独検診による乳がん死亡率減少効果について、以下の通り纏められています。
1)マンモグラフィ単独法(40~74歳)
40歳~74歳を対象にマンモグラフィ単独法を検討した5つのランダム化比較試験を用いたメタ・アナリシスの結果では25%の死亡率減少効果が認められました。
40~49歳を対象にマンモグラフィ単独法を検討したランダム化比較試験は5研究あり、そのメタアナリシスの結果では19%の死亡率減少効果が認められました。
50~74歳の効果を評価した4研究を用いたメタアナリシスの結果では25%の死亡率減少効果を認めました。
40歳代の効果は、50歳以上に比べて小さいものの、統計学的な有意があることから、死亡率減少効果はあると判断されました。

マンモグラフィによる乳がん検診は、対象集団の(例えば福島市の検診であれば福島市の)乳癌死亡率を下げることが目的であり、マンモグラフィによって、乳がんがすべて見つけられるわけではないので、異常なしの結果が来ても、マンモグラフィで確認できない乳がんが既に存在している可能性はあるのです。一般に小さなシコリをマンモグラフィで見つけられるかどうかは、上で述べたように乳房の状態によって大きく異なります。特により若い女性の乳房に出来たシコリは見つけるのが困難なことが多く、超音波検査はこのようなシコリを見つけるのが得意です。次回は超音波検査の意味について説明します。

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